晴天。
陽光の射す職場が異様に白かった所為か、夕方より頭痛。
拍動性の頭痛は次第に強くなり、片頭痛と自覚された。
忙しかったゆえ動かざるを得ないのが、非常に辛かった。動くたびに強烈な痛みに襲われる。
イミグラン服用。間に合った。
地獄のような夕方であった。
遅めに帰宅し、妻を相手に夕食。
電話をしておかなかったから、おかずはあり合せの物しかなかった。
茄子の味噌煮の残りと、大根菜の煮びたしの残り。
申し訳ないと思ったのか、妻は出汁巻き卵を作ってくれた。飯二杯食う。
食事時の話題に、妻が仕事に出たいと言い出した。
経済的に困窮しているわけでもないのに何故か、と俺は尋ねた。
妻の説明はどうもはっきりしない。
小遣いが欲しいのか、と言えばそうではないと答える。パッチワークにも飽きてきたから、とか言う。
暇だから仕事に出たいと聞こえて、俺はちらっと頭に来た。
「暇つぶしに仕事に出るような考えはやめなさい」と言い放った。
すると妻はぽつぽつと意見を述べ始めた。
取りとめもなく、あちこち枝葉の付く妻の話を聞くのは、たいそう忍耐の要ることであった。
要約すると、以下のようであろうか。
娘が幼稚園に行くまではとても忙しいのに、行ってしまうと途端に時間が空いてしまう。
家事のローテーションを済ませてしまうと、一軒家に一人きりになる。
世間と隔絶しているようで、寂しい。
先に言っておった「パッチワーク・・・」云々とは違うではないか、と思ったが。
何となく気持ちはわかる。
俺も休職しているおり、社会から取り残されそうで、技術と知識が錆付きそうに思えて、非常な焦燥感と不安にとらわれたからだ。
研修医のように糸結びしてみたりしてたっけ・・・。
あの時の気持ちに似ているのだろうか。
病気の俺と妻のそれを比べるのは難しいのかもしれないが、自分の経験でしか他人の気持ちを量れない俺は、そのように思った。
「好きにしたらよろしい」と言い置いた。
妻が外に出るのはいいのだけれど・・・。
妻の良いところを目ざとく見つけて言い寄る男がおると、嫌である。俺は嫉妬深いのだ。
あほな心配をしていると笑われようが、妻を見出した俺のような男がもう一人この世におらん、とは限らんのである。俺の考え(妄想)の中では。
よって、女ばかりの職場を見つけてきてくれよ、と俺は心の中で祈っている。
というか、まだ妻が本気で求職すると決まったわけではないのに。
先先ばかりを勝手に想像しては心配する、俺である。