大風。台風による風かどうかは、不明である。
むぅっと熱い空気は熱帯から運ばれてきたもののように思われる。
客の一人が俺の白髪の多いのに目を留めた。
「白髪のひとは賢いんですってね」などと、労いのような言葉をかけてくれた。
36歳くらいから、中途半端な年齢からであるが、ずいぶんと白髪が目立つようになってきた俺である。
長いものではないが、短いからこそ、立っており目立つ。
「そうなんですかー」と言いながら処置をした。
抗鬱剤を大量に処方されていた少女の髪にはやはり、白髪の目立っていたことを思い出した。
二十歳前後であったと思う。
なにぶん昔のことで、記憶も定かではないが、若白髪というには傷ましい様子であった。だから、覚えていたのだろう。
頭に作用する薬は頭髪にも作用するのだろうか?
あまりに些細な副反応ゆえ、誰もそれに目を留めない。
あの少女など、鬱病が軽快したあとには悩んだのではないだろうか、と思われて仕方がない。
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