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(後付)
金曜日の俺は多忙である。
本日も遅めの帰りになった。遅めといっても、深夜ではない。
義母は俺の帰るなり「いつもこんなに遅いの?!」と、怒りとも驚きともとれない表情で訊いた。

義母は俺の仕事の事情を知っているはずなのだが。最愛の娘である俺の妻のこと、可愛い孫娘である俺の娘のことを想うと、口説いてしまうのかもしれない。
ちらっとむかついたが、上記のように思うことで完全に抑えることができる。

食べてきたのだが、義母が夕食を用意してくれていたのを食べる。
妻の味とは少々違うのだな。ほんの少し甘め。向こうの地酒に合う感じ、と思う辺りが左利きのゆえん。


義母とはあまり話すこともない。俺のことを無口だ、と義母は言った。
「そうですかねー?」と俺は相槌をうつ。義父が俺以上に口数が多いとは思えないが?と、内心思う。
疲れているからだろう、と義母は勝手に解釈してくれた。
まあ、そうでもある。一日ひとと話す仕事をしてくると、帰宅後はしゃべりたくないときもある。

話す話題が思いつかず。
娘のことなどが中心であったろうか。
届いていた幼稚園の制服を着せたとか。とてもよく似合って、しかもお嬢様みたいだった、と悦んでいた。
娘の幼稚園は私立である所為か、制服が上等なのだ。ユキ・トリイというデザイナーのブランドである。
帽子もかばんも、持ち物の全てが指定品だ。
金が掛かって仕方ないのだが。どうしたわけかこの土地では、公立の幼稚園は僻地(?)にしかないのだ。

義母が言う。妻が旅行中のつもりでここへ来たが、娘の入園式が見たいからそれまで滞在したい、と。
正直、いやである。
しかし、いやだとは言えない状況。
脳をフル稼働させて、機嫌を損ねず断る言い訳を考えたが、思いつかん。
承知しておいた。然るべくだ。
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