雨にての一日が始まった。
猛暑日であった昨日と比べると、気温も低めであった。しかし、湿度の高いのが体力を奪う。
午前中、予約客との商談。午後のCT検査のためにさくさくと済ませたかったが、相手のあることとて、そうも行かない。正午を割って、いつものことだが、終了した。
CTを済ませて、泌尿器科医と話す。
予想通りの言い様であった。放射線科の医師の見立てによっても、おそらく悪いものであろうとのことで、見解が一致。要するに癌ということである。
症例数の多い、実績の確かな病院の泌尿器科への紹介状を書いてもらった。来週中には行くように、予定を調節せねばならなくなった。さすがに面倒だとは言えない。
俺の得た病は、RCC(Renal Cell Carcinoma)---腎細胞癌である。
右の腎臓に3センチほどの腫瘍がある。
大きいか、小さいかといえば、小さい部類だろう。早期に発見できたことは不幸中の幸いであった。
ただ、場所が悪い。腎臓の内側に腫瘍がある。よって、部分切除は大変難しく、右の腎臓を丸ごと取ってしまわねばならない。
腎臓のできものは9割方、悪性であるという。また専門医による診断も受けた。
それなのに、万が一にでも良性の腫瘍ではあるまいか、と思いたい気持ちが半分くらいあった。
良性か悪性かを確実にするには普通、その部分の細胞を取るという作業がなされるのであるが、腎臓は血液の豊富な臓器であり、癌が散らばる恐れがあるゆえ、そういうわけにはいかない。
①腎臓に腫瘍がある。
②専門医の見立てでは癌であろうとのことである。。
③唯一確実な治療は手術療法である。
④十に一、良性の腫瘍であったなら、腎臓は取られたけれど癌ではなくて良かった、と思えばよい。
④’十に九、悪性の腫瘍であったなら、早期に発見され、癌が切除されて良かった、と思える。
・・・そう思うしか、混乱する気持ちのやり場がなかった。
それにしても、癌持ちになっていたとはねぇ・・・。
圧痛があるとか、血尿があったとか、身体の症状があれば違うのだろうが、未だ実感がわかない。
帰宅後、妻に言葉少なめに事実のみ説明した。十中八九癌であること、紹介された病院で手術すること、などなど。
「治るの?治るんでしょ?」と信じがたい事実に驚愕と不安感を持って、妻は尋ねた。
当然の反応であろう。
「治るよ」と、俺は自分にも言い聞かせたくて、答えた。
「ほんとやよね?」と妻は念を押す。妻も自分に言い聞かせたいのだろう。
俺も「ほんとに治るよ」と、お互いに言い聞かせる。
いつもは五月蝿いくらいにおしゃべりな娘も、親たちの雰囲気を察して、神妙な顔をして黙って様子をうかがっていた。
食卓に笑いはなかった。
明日から夏休みだという娘に夜更かしを許して。となりのトトロを眺める。
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