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(後付け)
連休最終日は大荒れの天候であった。
終日、雪。時折、ぱちぱちと硬質な音をたてて、あられが降る。

午後、妻と娘を連れて買い物に出た。激しい雪の中の外出であった。
道路にはさほど積もっていない。が、慎重な運転の車が多く、流れは滞りがちであった。
日用品の買い物を終え、車に戻る。
依然として、大粒の雪が降り続いていた。
帰るのも惜しくなり、帰ってしまうとすることもなく家にこもりがちになるゆえ、海岸に向けてドライブ。

強い季節風の中、浜に寄り添って忍ぶような漁村を走り抜ける。荒天のこと、漁もないらしい。同じくして、観光客の姿ももちろん見えない。
人気の消えた寒々しい通りを抜けると、鈍い色の海が見えた。
高い波だった。防波堤は波に洗われ、わずかに存在しているのみ。
荒れる海はどろりとしたスープのように、蠢いている。
岩だらけの波打ち際には、波の華ができる。強い季節風に吹き飛ばされて、波間をゆっくりと舞い上がったり枚落ちたりを繰り返していた。
いつかの冬、希望を間近に感じながら、妻と二人きりで、このような白い海を眺めたことを思い出す。
場所は違えども・・・同じように暖かい缶ジュースを買い、車の中で小休憩。
二人が三人になり、車内は賑わしい。
雪は絶えず、暗い海に降っては融ける。


夕方より始まった雷が激しくなり、われわれの頭上を巡る。
稲光と、過たずの雷鳴ののち、暗闇に閉ざされた。停電であった。
娘を寝かしつけた妻が、壁伝いに階段を降りてきた。不如意な足音を立てて、俺の部屋にやってきた。
「停電・・・」と不安そうにしている。
すべての明かりと温みの消えた闇は深い。
窓の外の積雪の、ぼんやりとした明るさを頼りに寄り添い、電力の回復を待つ。
一度落雷したせいか、激しかった雷はぴたりと止んだ。不安な二人は交わす言葉もなく、闇を見据えていた。

静かで暗い、お互いの温みしか頼るものはない。しかし、不安は不思議な興奮をもたらしている。
長い停電であった。

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