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俺たちは子供だった。小学校低学年くらいだった。
そこは小さな神社だった。どこの村にもあるような、小さな目立たない神社。広くない境内の一角に、滑り台やらジャングルジムなど子供の遊具が置かれているような。
季節はわからない。だが、寒くはなく緑のある季節だ。たぶん、俺たちの時代の、学校週休二日制ではない頃の、土曜日の昼下がりのような気がする。
ブーンと低く小さな音が聞こえていた。ヘリコプターの遠くに飛ぶ音だったかもしれない。
俺は君といた。
忘れ去られたように誰もいなかった。

拝殿の登り口の階段に二人で座っていた。
二人とも腹を減らしていた。
俺たちは、賽銭箱を探った。小さな社に似つかわしい小さな賽銭箱には、五円玉や十円玉がわずかに入っているだけだった。
かき集めた賽銭は百円にも満たなかった。
俺たちは失望した。

俺たちは盗んだ金を握りしめ、神社の近くにあった駄菓子屋で、氷菓子を買った。50円の、練乳味のする長細いアイスキャンディーを一本買った。
俺たちは賽銭泥棒だった。
駄菓子屋は俺が子供のころによく行った「ヒラノ」という駄菓子屋だった。痩せた愛想のないおばさんが店番しているところだった。
おばさんはやはり無愛想に俺たちをねめつけ、「ありがと」と無表情に言った。
俺はおばさんに盗みを働いたことがばれたのではないかと思い、どぎまぎした。その反面問いただされなかったことに、ばれなかったのだなとほっとした。

俺たちはまた神社に戻った。
誰もいなかったが、俺たちは境内の蔭に隠れて、アイスキャンディーを食べ始めた。
一口ずつ、かわりばんこに食べた。
君は何も言わなかったが、アイスキャンディーを渡すたびに俺にほほ笑んだ。
境内のさらさらした土を掘って、俺は食べ終わったアイスキャンディーのバーを埋めた。
君と俺は共犯者だった。


薬のくれる不自然な眠りのはざまに。
真っ暗な虚無の中に。
フラッシュがたかれたように浮かび上がるものがある。
寝ぼけた脳の不思議なつぶやきか。忘れたと思っていた記憶の断片と、現在の記憶が交差する。
そんな夢を見た。
それを思い出した。


王朝貴族の思ったように、ひとが自分を想ってくれるから夢に姿を現すのか。
それとも、自らの想いがひとを夢に呼び寄せるのか。
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