昨日に引き続き晴天。
いつもの金曜日。俺は予約客と相談をする日である。
これまたいつものごとく、すべての商談が終わり、立ち上がろうとした時のことだ。一瞬の視界の途切れの後、商談室の床に俺の肉体は横たわっていた。
俺は失神したのだった。
そこに寝転んでいるわけが、瞬間解らなかった。
「なぜこんなところに寝そべっているんだ、俺は?」と思っていると、女子職員が慌てて駆け寄ってきた。
「ここ、どこかわかりますか?!」と、真剣な顔をして怒鳴っている。
職場であると俺が答えると、職場の名前を答えるようにまた、怒鳴る。
とても怖い顔であった。ケツに火のついた様子が俺には可笑しかった。
照れくさい気持も湧いて出た。
とんでもない名称を答えて、驚愕させてみたいような、その様子をしらけて眺めてみたいような、どうにも困ったこころが現れてきた。
別な女子職員が車いすを押し、走ってくるのを見て、俺は完全に公式の顔を取り戻した。
職場の名前を吐き捨てるように言い、何を慌てているのだというような顔をしてみせた。
女子職員に助け起こされ、車いすを断って、適当な台(笑)に横たわる。
特に緘口令を敷いたわけでもないのに、俺の倒れた件は広まらず。しばらく商談室で休んだ後、軽く昼食をとり、仕事に戻れた。
人使いの荒い会社である。
生きている間は風の止まることはない。
我々は風を、逆風であるとか、順風であるとか、勝手に名前をつける。
俺は明日は逆風が吹くのではないか、いやきっとそうに違いない、と考えることが多い。
だが、逆風のときは後ろを向いて進んだら、順風になるのではないか? 言葉遊びをしているだけのようだが、そんな風に思ってにやりとできることが、案外大事なのかなと思っている。
そよ風、つむじ風、台風。風にもいろいろある。
折々の風に吹かれ、舞い踊る木の葉のごとく。
されど、人は木の葉にあらず。
時に風に乗り、時に耐え。
やがて、望む終の棲家に至る。
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