快晴。
暑いが、風の中に秋の匂いを感じる。
とても辛い一日であった。出勤したくない気分であった。
出勤してしまえば、仕事はちゃんとできる。
俺の前頭葉では何か得体のしれない激しい嵐が巻き起こっているだろうというのに、脳の別の部分ではやるべきことをこなしている。不思議な感覚である。
体はだるかった。ついてくれていた女子職員が「元気ないよ」と、俺に文句を言った。何か答える前に別の女子職員が「○○はデプレ(うつ)だから」と口をはさんだ。
そうなのだ。周りはみな俺が病気だから仕方がない、と諦めて見ている。
また、いつものやつだろう、と冷めた目を向ける。
どのステージでも、役目は俺でなくてもいいのだ。俺がいなければ、他の誰かが役目を勤める。それだけのこと。
俺が俺と認められ、必要とされる場所はどこにあるのだろう?
そもそもそんな所などあるのか?
職場など俺は歯車の一つにすぎない。
家庭でも、父親らしいことなど一つもせず、夫としても優秀な部類ではない。俺でなくてもいいのではないか、とよく思う。妻は俺と暮して幸せなのか?
夫婦で、そのような深い話などはしない。
俺の顔色を見て妻は、いつものうつの波が来ていると思っているのだろう。
新潟の家に、両親はもうなく、弟の家庭があるばかりである。俺の帰るところではなくなった。
最愛の姉も、自分の家庭を持っている。
帰るところなど、どこにもない。
自分の家でさえ、仮の宿。
人にしてやったことばかりを思い出し。
人にしてしまったことばかりを思い出し。
情けなかったことばかりを思い出し。
見苦しかったことばかりを思い出し。
これは当然の報いだと思いつき。
さらにさらに、迷路に迷い込む。
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